システム分析は、経済学と工学、生物学と医学、歴史学と文献学、政治と軍事において適用される。理論的研究にも応用研究にも、新しい機器の試作品の選定にも、資本投資の代替案の選定にも用いられる。内容をより明確に示すために、まずシステム分析にかかわる問いを立てておこう。問いは、システム分析の実務のなかで生じたそのままの形で提示する。
概念を定義することは、それを制限し、狭め、貧しくすることだとよく言われる。それでも作業上の道具としては、その現象をほかから区別する本質的な特徴のいくつかを際立たせることによって、可能な定義の一つを主要なものとして用いることができる。
システム分析とは、観察しにくく理解しにくい対象における性質と関係を、それらの対象を目的志向的なシステムとして表現し、そのシステムの性質と、目標およびその実現手段のあいだの相互関係を研究することによって、明らかにする方法論である。
それが適用されるのは、問題が、その解決に必要な情報を対象の直接的な観察によっては得られないような形で立てられている場合である。そのとき対象は、あるシステムのサブシステムとして、また他のシステムと相互作用するサブシステムの集合として扱われる。作業上のものとみなすべきこの定義は、システム分析の方法をほかの研究方法から区別し、それを科学的知識の特定の領域に位置づけることを可能にする。
数多くの研究・分析の方法のうち、圧倒的多数は、対象の本性と固有性を考慮しつつ、対象を直接に観察することを志向している。そこではつねに、研究対象を環境から切り離すことができ、直接にあるいは機器を用いて観察できることが前提とされている。これに対しシステム理論に立脚するシステム分析の方法は、研究対象の根本的な複雑さ、周囲の世界との広範で強固な相互連関、そしていくつかの性質が観察不可能であることを考慮に入れる。
したがって研究者は、実在の現象と、その性質および周囲の世界との結合について得られている事実データから出発し、それらをシステム理論の抽象的なカテゴリーへと翻訳し、既知のシステムの性質にもとづいて新しい性質と新しい相互関係を明らかにする。多くの研究方法では、対象はあらかじめ厳密に定められている。システム的な研究では通常、対象そのものを特定すること——その発見あるいは構成——が重要な段階の一つとして含まれる。ほとんどすべての研究方法は、明確に定式化された問題から出発する。システム分析は、問題をいかに正しく立てるか、どの研究方法を用いるかという問いを扱う。
システム分析の本質は、複雑なものをいかにして単純なものへ変えるか、解くことが難しいだけでなく理解することさえ難しい問題を、いかにして解法の存在する明快な一連の課題へ転化するかにある。
システム分析はつねに具体的である。それは(当初は漠然としか規定されていないとしても)特定の経済主体を、そして(当初は不明瞭にしか定式化されていないとしても)特定の経済的問題を扱う。
システム分析は、問題を分析し決定を下すほかの方法と決して対立するものではない。新しいのは、以前は科学や工学の個別の課題を解くために別々に用いられていた、相互に関連する一定の概念、方法、技法の集合を、統一された方法論のなかで総合した点である。さらに、このシステム的な概念と方法の複合体は、これらの概念がそれまで用いられてこなかったまったく新しい活動領域——計画とマネジメントの領域——へと広げられている。
複雑な問題の分析におけるシステム的方法の強みは、一方では、解くにはあまりに複雑な問題を構成部分へと分解し、確立された解法をもつ具体的な課題の定式化にまで至らせながら、他方ではそれらの構成部分を統一された全体として保持しうる点にある。
ソ連の研究者С・П・ニカノロフがきわめて的確に述べたように、システム分析は、問題を解決する過程を、システムを設計し、製作し、利用する過程として表現することを可能にする。
システム分析において本質的なこと、その注意が向けられていることを、アメリカの研究者クエイドはきわめて的確に定式化した。「システム分析とは、問題に対する一つの見方である。数学的な形式化とコンピュータの利用は必要であり、有用でさえありうるが、そうでない場合もある。ときには問題を注意深く考え抜くだけで足りることもある。しかし、不確実性の条件下で決定の準備にかかわるいかなる分析にも、その複雑さのいかんを問わず、一定の要素が存在する。すなわち、目標あるいは複数の目標、それらの目標を達成するための代替案あるいは手段、各代替案を達成するために費やさねばならないいっさいのもの、すなわちコスト、代替案とそれがもたらす結果および費用との依存関係を記述するモデル、そして望ましい代替案を選び出すための基準——これらの要素は、行動方針の選択に影響を与えることを目的とするいかなる分析にも存在する。」
システム分析が体現している、複雑で、特別に練り上げられた、かなり煩瑣な科学的形式化を適用する価値があるのは、多くの人々の活動と多大な物的・その他の支出をともなう、十分に複雑で大規模な問題に対してだけであることは、まったく明白である。
システム的な形式化をどこに適用でき、どこに適用できないかを正確に言えるような問題の分類を確立することは難しい。問題の出自は、必要と可能性という点で異なる。第一の場合は単純である。すなわち、既存の資源や作業方法、あるいはある種の財が人々を満足させなくなり、現状を変える必要が生じる場合である。
システム分析は、きわめて複雑な問題が生じたときに適用される。第二の場合は原理的により複雑である。すなわち、宇宙飛行や熱核エネルギーの利用のような、新しい可能性が現れる場合である。いずれの場合も、そうした可能性の開発は、国民経済のまったく新しい部門の創出と結びついている。この場合、システム分析の適用は有用であるばかりか、絶対に必要となる。というのも、問題そのものが——性格上複雑であるがゆえに——まだ定式化されていないからであり、新しい可能性の実現は人間活動、社会と国家の生活のきわめて多様な側面に影響を及ぼすからである。さらに複雑な場合も挙げられる。新しい可能性がいたるところで、ほとんど時々刻々と生じる場合である。たとえば実験化学は、きわめて多様な性質をもつ新しい化合物を年間三十万種にも及んで合成しており、それらは多くの、いやおそらくすべての生産部門で利用されうる。
人間の活動は、便宜的に二つの領域に分けられる。ルーティンの活動の領域、すなわち規則的で日常的な課題の領域と、これまで出会ったことのない新しい課題を解決する領域である。第一の領域では、課題の解法は通常すでに確立されており、システム分析の余地はない。もっとも、ルーティンが存在すること自体が、場合によってはそれ自体一つの問題を構成する。たとえば、数百万人規模の経済管理機構が存在すること自体がマネジメントの困難を生み、問題を生じさせる。管理職員数が絶えず増大する傾向は、大きな問題である。しかし、これまで知られていなかった新しい課題の解決にかかわる人間活動の領域(たとえば長期計画、科学、設計開発)では、システム分析の方法はほとんど普遍的に適用可能であり、場合によっては不可欠である。
システム分析の方法においては、問題を構造化の度合いによって区別することも慣例となっている。すなわち、問題の立て方の明確さと自覚の度合い、その構成要素と相互関係の理解の詳細さと具体性の度合い、そして最後に、問題の定式化のなかで示される量的要因と質的要因の比率によって区別する。これを踏まえて、三つの問題のクラスが区別される。良構造の、量的に定式化された問題。悪構造の、すなわち量的評価と質的評価の双方を含む混合的な問題。そして非構造の、すなわち質的な問題である。
第一のクラスの問題にはシステム分析の方法は必要ない。すでに数理モデリングの十分に発達した強力な形式化と、厳密な量的解法が存在するからである。第二のクラスの問題——量的評価と質的評価が混在する悪構造の問題——が、システム分析の方法の主たる適用領域として位置づけられる。非構造の問題はシステム分析の方法では解かれず、その解決にはいわゆるヒューリスティックな方法が適用されると考えられている。もちろん、三つのクラスのあいだに明確な境界を引くことは難しいが、事柄の本質は別のところにある。
システム分析の方法とは、まさに問題を構造化し、秩序づける方法である。システム分析が適用されるのは、当初は非構造で漠然としか規定されていない問題を、少なくとも弱くでも構造化し、次いでそれについて新たな追加情報を集め、その構成要素の相互関係を確立し、可能なかぎり(たとえ主観的で専門家によるものであっても)量的な評価を与え、その問題を構造化された問題のカテゴリーへ——すなわち数理モデリングの形式化と最適解の選択をすでに適用できるカテゴリーへ——移すためである。
いくつかの場合には、システム分析が主として適用される人間活動の領域を通じて、すなわち研究上、軍事上、政治上、経済上の問題を解決する方法論として、それを定義しようとする試みもなされる。
システム分析が成功する第一の条件は、それが本当に必要とされるところで適用されることである。複雑な対象にかかわる複雑な問いに向けられたシステム的研究の性質そのものが、高い水準の知識と、分析のいずれかの段階における高度な資格をもつ専門家の参加を要求する。ところが、システム分析の流行は、多くの研究者、大学院生、さらには卒業論文を書く学部生までをそれに向かわせた。当然ながらそうした場合には、「扱いやすく」まったく見通しのきく対象か、任意の操作を加えられる仮設的なモデルか、あるいはコスト、労働生産性、製品品質といった個別の問題が選ばれる。発注元の組織の経営陣や研究者自身が不誠実に取り組むなら、システム的研究が成功することはありえない。
システム分析が成功する条件としては、次の三つの要素が存在することが挙げられる。(1)明確に理解された必要、目標、あるいは目的。(2)アイデアの源泉、蓄積された情報、経験、対象についての理解。(3)資源、すなわち経験を積んだ専門家、ならびに設備、資材、資金。
システム分析はそれ自体が、これら三つの要素すべてをそろえるための道具である。すなわち、目標と、それに対応する情報および資源を明らかにし練り上げ、それらを目標へと結びつける道具である。したがってシステム分析の専門家は、自らの仕事が成功する条件を知り、その条件が満たされている場合にのみ仕事に着手しなければならない。