С・オプトナー『経営・産業問題解決のためのシステム分析』
システム分析は、成功の度合いにこそ差はあれ、軍事上および産業上の問題の解決にすでに広く適用されている。ある人々の見方によれば、システム分析による問題解決の成否は、問題をどれだけ巧みに定式化したかではなく、問題を全体として実験にかけられるかどうかにかかっている。システム分析の適用の成否と、そこから得られる解の実行可能性は、実験者が問題の現実世界を記号的な形で表現しうるかどうかにも左右される。
問題解決の方法を一般化したことによって、システム分析者を不要にするような万能の方法が生まれたと考えてはならない。代替案を繰り返し検討することが方法の本質をなすかぎり、この方法はヒューリスティックなままである。試行錯誤は依然として存在するが、形式的な手続きの枠内での試行錯誤である。問題解決の方法は、分析の主要な要素を、問題との適切な関係のうちに定める。これによって問題を解く者は、問題の各部分の構造がどうなっているか、それに整合する解をどのように得られるかを、あらかじめ理解できるようになる。本来的に不明確な構造をもつ問題を解くために、この方法は構造を定めるプロセスを助ける一連の技法を備えている。
問題解決の一般理論を経営の世界の問題に適用することが適切かどうかについては、疑いが生じうる。経営の世界は科学的方法の使用に適さないと考える批判者もいる。経営の世界が、科学研究の行われる環境とは異なる環境で課題を解決しているという主張は正しい。経営の世界の問題が科学的な問題よりもはるかに低い程度にしか定義されていないという主張も、おそらく正しい。しかし、経営の世界の問題が科学的方法による分析に適さないという主張は正しくない。
「科学的方法」という名称そのものは何も語らない。厳密な科学と厳密でない科学の境界を引くことは難しい。たとえば厳密さは、ある活動を科学的と分類するための試金石の一つにすぎない。おそらく最も本質的な試金石は、対象の分析が純粋に記述的な用語なしに行われているかどうかであろう。抽象と一般化が用いられているならば、諸科学のあいだの違いは主として程度の違いになる。他方、論証が非論理的で、概念が曖昧で、決定が直観的で、要求が精確でなく漠然としているならば、「科学」のあいだの違いは実質の違いになる。しかしそうした性質は経営の世界に特徴的なものではない。いずれにせよ、意思決定者が現実を表現する際の論理性、明瞭さ、明確さ、正確さは、彼らが自らの事業を営むことを可能にする程度のものではある。
抽象は手段であって、それ自体が目的ではない。それは普遍的な言語であり、より発達したいずれの形態においても、門外漢にはほとんど何も語らない。一定の条件のもとで、抽象はその明晰さという大きな利点をもつ。現実世界からそのさまざまな記号的表現へと移ることによって、システム分析者は自らが観察するものを分析する能力を得る。この移行の目的は、現実世界の細部や完全性を記号的表現から排除することではない。システム分析者は、記号的方法によって得られた問題の表現と現実世界とのあいだを、反復的な環状のプロセスによって、方法的に行き来する。この反復のプロセスこそが、問題の抽象を現実世界におけるその対応物に近づける手段である。
問題解決とは、システムの特性を維持あるいは改善する活動として定義される。システムは、問題解決のプロセスが遂行される手段である。システムの維持あるいは改善は、資源利用の有効性を高める変更を導入することによって達成される。ここでいう資源とは、人、材料、設備、装置、資本、時間である。
資源利用の有効性の変化は、次によって測られる。
- 価値と利潤の量に対応する変化をともなわない、資源必要量の増加または減少。
- リスクへのさらされ方の増加または減少。
- 基準によって測られる、なんらかの相対的な値の変化。
問題そのものより複雑な問題解決の方法を適用すべきではない。経営上および軍事上の問題を解く際の情報処理がきわめて複雑になりうることは明らかである。したがって問題解決へのアプローチを総合する際には、方法論の失敗を招きかねないシステム改善上の困難を見きわめることが決定的に重要である。そうした問題は、私が質的な問題あるいは悪構造の問題と呼ぶ群に属する。それらは既知のものと未知のものの双方を含み、しかも未知のものが優勢になりがちであり、それゆえとりわけ精確な分析方法が必要になるからである。
この種の典型的な問題は次のようなものである。
- 解決が将来に予定されている問題。
- 広範な代替案に直面している問題。
- 大きな資本投資を要し、リスクの要素を含む問題。
- 技術的達成が現時点では不完全であることに左右される問題。
- 費用や時間についての要求が十分に定まっていない問題。
- その解決に必要な資源の組み合わせゆえに、本来的に複雑な問題。
問題にシステム的な解を与える方法論は、なによりもまさにそうした大規模で複雑な問題に向けられている。これらの問題はきわめて解きにくく、量的な要素と質的な要素の双方からなりうる。混合的で不確定な性格をもつそうした問題の解決こそが、今日の我々の世界にとって最も切実であり、経営者とシステム分析者の能力を適用すべき最も重要な領域を成している。
とりわけ関心を引くのは、その運用が将来に予定されていながら、そのためのシステムを今日設計しなければならない中規模および大規模の問題である。そうした問題の解決におけるリスクは大きい。解決のためには、将来を十分に詳細に予測しなければならないからである。将来が遠ければ遠いほどリスクは大きくなり、問題を解く者はより大きな賭けに出なければならない。大きなリスクは、取り返しのつかない損失として、あるいはさまざまな領域に生じる不健全な膨張として現れうる。それは多額の資金の支出、製品開発の重複、要員・装置・設備の二重化、時間の不当な浪費、成功の度合いについての不確実さといった形をとることがある。
問題解決の方法論は、望ましい成功の水準があらかじめ精確に定義されていることも、解と比較しうるシステムが最初から存在していることも要求しない。問題が完全に理解されていることも、明確かつ完全に定式化されていることさえ必要としない。これらの問いを解決することこそがシステム分析者の課題であり、彼は不完全にしか定義されていない問題の欠けている要素と構造、その代替案と解を再構成しなければならない。問題を解く専門家は、研究すべきシステム(その状態が問題を生じさせているシステム)を、問題が当初定義されていたのとは異なる仕方で特定することがある。当初の問題の定式化に余分なもの、矛盾するもの、満足のいかないものが含まれていると分かれば、彼はそれらの欠陥を取り除き、問題そのものを正しく立て直してよい。このように、問題を解く専門家の課題には、とりわけ問題を定義することも含まれる。
経営の問題を解くにあたっての目標は、問題そのものに内在する精確さをもってその分析と解決を行うことだと言える。問題の大きさや複雑さがどうであれ、目標は、問題が評価され、解が見いだされ、その実施が行われる既存の方法を改善することにある。問題解決の方法論は、状況の分析に客観性をもち込む付加的な手段を与える。問題を解くのは人とコンピュータであり、解を見いだすためのコンピュータプログラムを書くのも人であるが、解を見いだすうえで最も重要なのは、やはり客観性と論理である。客観性は観察における第一の要件である。合理性(論理性)とは、論理的推論の使用にもとづく思考の過程として定義される。観察によって広く裏づけられた知識の総体は、証拠となる。観察とは、あるシステムをのちに説明するために、データをそのシステムと同定していく過程である。説明とは、十分に確立された事実からの言明の論理的な導出として定義される。説明の過程は合理的でなければならない、すなわち論理的に行われなければならない。
特定された産業上の問題の多くは、量的・質的な問題であることが判明する。量的問題とは、あらかじめ定められた数の操作の方法を用いることによって解が得られる問題である。質的問題とは数値によらない問題であり、将来の資源あるいは十分に定義されていない資源と、その性質や特性を詳細に列挙することにかかわる。量的な側面と質的な側面の双方をもつ問題についての理解が深まるにつれて、その量的な側面はより容易に捉えられるようになり、精確な量的解も実現しやすくなる。オペレーションズ・リサーチは、経営、防衛、行政の問題の解決に数学を適用することによって、すでに多くの有益な前進をとげている。
しかし、いまだ質的な状態を脱していない経営上の問題を解くには、量的方法の適用可能性は限られている。したがって、質的な問題を合理的に解くことを可能にするほかの方法を動員する必要がある。質的な側面と量的な側面をあわせもつ問題を、混合的な問題と呼ぶことにする。
システム分析は、そうした混合的な問題に対処することを可能にする最も新しい方法である。最も扱いにくいのは質的な問題である。それらは不完全にしか構造化されていないからである。しかも質的な問題は、その論理的な構成要素へと容易には表現できない。この広い領域で主要な役割を果たすのが判断、直観、経験、そしてときには単なる慎重さや無謀さであるのも不思議ではない。システム方法論の目的は、これらの困難な問題を解くための実用に耐える構造をつくり出すことにある。
ここから、経営・産業問題を解決する方法論は次のことを可能にするものでなければならないことが導かれる。
- 問題解決の全体のプロセスを機能的に組織するシステムを規定すること。
- 問題解決に必要な構造を与えるシステムのパラメータを指定すること。
- システムとその能力のモデルを記述し、それによって問題解決の過程で出力の代替案を反復しうるようにすること。