モデル

モデルとは、現実のある側面を捉え、研究されている問いに答えを与えるために作られた、なんらかの形式(たとえば数学的、物理的、記号的、図的、あるいは記述的な形式)による現実の抽象的な表現である。

「モデル」によって我々が意味するのは、研究の過程で、当の研究にとって本質的な一定の特徴を保ちながら、原型の対象の代わりを務める物質的なあるいは観念的に構想された対象である。モデルを構築し利用する過程をモデリングと呼ぶ。

モデルが必要とされるのは、次のためである。

  • 特定の対象がどう成り立っているか——その構造、内部の関係、根本的な性質、発展と自己発展の法則、環境との相互作用——を理解するため。
  • 対象やプロセスを制御することを学び、定められた目標と基準のもとで最良の制御方法を定めるため。
  • 直接的な帰結も間接的な帰結も予測するため。

科学的なモデリングについて語るときには、「モデル」と「理論」という語の意味を明確にしておく価値がある。現代の科学文献では、これらの概念はさまざまに解釈されており、両者の境界は曖昧である。科学方法論では現在、次の解釈が受け入れられている。

  • モデルとは、特定の対象を制御し、あるいはその性質を予測することを目的として、主としてその振る舞いと性質を研究することに向けられた道具である。
  • 理論とは、モデルよりも抽象的な道具であり、その主たる目的は、単一の特定の対象ではなく、対象の一つの類全体の振る舞いや性質を説明することにある。理論は、有限の、あるいは無限でさえある特定のモデルの集まりを含んでいる、と言うこともできる。

特定のモデルを構築する際には、対応する理論の法則と方程式が用いられる。モデルは特定の対象について「どのように」「なぜ」という問いに答え、理論は似た性質をもつ対象の一族全体についてそれらの問いに答える。ただし指摘しておくべきは、複雑なプロセスや現象のモデルを練り上げる際には、異なる部門、異なる学問分野、さらには異なる知識領域に属するいくつもの理論の概念と関係を援用しなければならないことが多い、ということである。

モデルは想像のなかで——思考によって観念的に——構築されうる。そうしたモデルを観念的モデルと呼ぶ。あるいは現実の対象やプロセスから作られることもあり、その場合は実在モデル、物質的モデル、ときに物理的モデルと呼ばれる。ある意味で中間の位置を占めるのが、抽象的な内容をもつ実在のモデル——記号(サイン)モデルである。モデルという概念は対象だけにかかわるものではなく、一定の点で次のものを包含する。モデリングを組織する主体と、モデリングが行われる目的の課題(いずれも目標を通じて)、モデル化される原型の対象、モデルがそこから作られる手段、そしてモデルが機能することになる環境である。

「モデルによって我々が意味するのは、対象(現象)についてのきわめて特定の限られた情報を担い、その一定の性質を反映する、単純化された——お望みなら、圧縮された——知識である。モデルは情報を符号化する特殊な形式とみなしうる。すべての元の情報が既知であって、それを別の言語へ翻訳するだけの通常の符号化とは異なり、モデルは——どのような言語を用いるにせよ——人がまだ知らなかった情報をも符号化している。モデルには潜在的な知識が含まれており、人はモデルを研究することによってそれを獲得し、明示的なものにし、日常の生活で実際に役立てることができる、と言ってもよい」(Н・Н・モイセーエフ)。