組織における意思決定のプロセスは、それを経ることで組織の問題が効果的に解決される一連の段階として捉えられる。ある程度の便宜的な区分として、この系列は十の段階からなると考えることができる。
- 組織の目標を定めること。
- 目標達成の過程における問題を特定すること。
- 問題を調査し、診断を下すこと。
- 問題の解を探索すること。
- すべての代替案を評価し、最良のものを選ぶこと。
- 組織内で決定への合意を得ること。
- 決定を承認すること。
- 決定の実施を準備すること。
- 決定の適用を管理すること。
- 決定の有効性を検証すること。
意思決定のプロセスが実際にどれだけの段階からなり、どの段階を含むのかについては、いまだ一致した見解がない。その理由の一つは、具体的なプロセスが行われる状況が異なることにある。状況が異なれば、意思決定のプロセスの各段階に置かれる重みも異なってくる。
ここでは「意思決定」と「問題解決」を同義語とみなし、決定そのものを、組織の現在のあるいはありうる状態のもとで望ましい成果を保証する有効な応答として捉える。
トップマネジメントの第一の責務は管理システムをつくることであるから、そのシステムの本性と性格を最初に明らかにしておくことが明らかに重要である。管理システムとは、相互に作用する人々の集団を構成要素とする組織のサブシステムとして定義できる。その機能は、組織の一定の問題を感知し(入力)、次いで一連の行動(プロセス)を遂行して、組織全体の活動からの収益を高める(満足)決定、あるいは組織のあらゆる入力と出力のなんらかの関数を最適化する決定を生み出す(出力)ことにある。
管理システムは「人間・人間」型の規範的なシステムであり、その第一の目標は組織の問題を効果的に解決することである。意思決定システムを設計するには、トップマネジメントはシステムの主要な構成要素を特定し、モデルを構築し、システムの有効性についてのデータを集めて活用しなければならない。システム分析とは、システムをより小さな部分へと順次分解し特定していくプロセスであり、システム総合とは、それらの部分を組み直すプロセスである。
組織は、自らの厚生を高める協働する個人からなる目的志向的なシステムとして捉えられる。組織に問題解決の機能が必要なのは、組織の資源の利用と、その成員のあいだでの便益の総原資の分配をめぐって問いが生じるからであり、また組織は環境に適応し、新しい行動プログラムを練り上げなければならないからである。管理システムは組織に、対応する状況が生じたときに実施者が適用する決定の集合を与える。個人の意思決定とは異なり、組織の意思決定は集団のプロセスであり、集団の成員のあいだの合意と適応を必要とする。
システムは情報の流れのネットワークによって一つの全体へと結ばれる。決定が満足のいくものでないと判明すれば、問題はフィードバックの環を通じて管理部門へ差し戻され、そこで全プロセスが繰り返される。システムは部分的に閉じている。管理システムは、組織の問題の解を組み立てる作業プロセスとして表すことができ、この作業プロセスの図式は、組織のほかのサブシステムの図式と変わらない。組織のあらゆる問題はあらかじめ定められた経路をたどり、管理者は問題解決のプロセスの一部をなす作業だけを行うことになる。ただしこれは、あらゆる場合に問題が必ずこのとおりに解かれるということではない。問題解決には別のアプローチが必要になることもある。プロセスが一つだけ必要というわけでもない。組織は、組織の問題を解くための多くの異なるプロセスを用意してよい。ただし重要なのは、これらのプロセスがあらかじめ設計されていることであり、ある問題を解くために特定のプロセスが選ばれたなら、それを適用すべきである。
組織の問題は、トップマネジメント、管理者、一般の従業員、株主が直接に特定しうる。問いはあらゆる階層の管理者が提起すべきであるが、株主も一般の従業員も含め、できるだけ多くの源泉を用いるのが理想的である。問題を特定する参加者が増えるほど、組織の仕事に利害をもつ人が増えるからである。
さらに組織は、問題を特定する主たる機関となる情報部門を設けるべきである。この部門は外部環境と内部環境についての情報を収集し、分類し、整理したうえで、あらかじめ定められた組織の業績基準と比較する。基準が満たされていれば問題はない。しかし基準からの逸脱が検出されれば、その原因が解決を要する問題として定式化される。情報部門は、組織が活動する環境の特定の領域——たとえば経済や政府の政策——についての情報を集める。次いで環境の決定的な要因が特定され、そのうち最も重要なもの、たとえば顧客や供給者が調査される。情報部門の活動は集権化することができ、その場合この部門が組織の外部環境と内部環境の双方の検討と評価に責任を負う。あるいはこの機能を分権化し、各部門が必要な情報を自ら集めるようにすることもできる。意思決定を円滑にするためには、文書の流れを定め、文書の書式を作る必要がある。問題を特定する段階で書式を用いることは、問題にかかわる情報を組織内で伝えるのを容易にするので、大いに役立つ。
問題を受け取った管理者は、その発生原因の分析に進むことができ、それによって正しい行動をとれるようになる。まず問題を検討する管理者は、既存の指示に目を通し、すでに適用されている決定(もしあるとすれば)の性質を把握する。あるいは、問題を特定した者に追加の情報を求めてもよい。情報部門が特定した問題や、決定の監視の結果として発見された問題には、通常それに対応する情報が付されており、管理者はそれを入手すべきである。すでに出来合いの決定が存在する場合、管理者は業務の実際の遂行を調べ、当の決定が適用されていない、あるいは誤って執行されている、あるいは効果がない、あるいは誤っていることを発見することがある。
管理者は、組織の仕事のさまざまな領域にわたって調査を行い、情報部門からデータを得て、解こうとしている問題の原因を明らかにするために必要と自ら判断するあらゆる新しいデータを収集する、相対的な自由をもたなければならない。管理システムの内部では、すべての部門が管理者に全面的な協力を提供すること、そして管理者は——機密情報を除いて——組織のあらゆる部署で自由に情報を集めてよいことが規則として定められているべきである。情報部門は疑いなく、外部の出来事についても内部の出来事についても情報の主たる源泉であり、この部門は管理者が必要とする情報を探索し請求するための一連の手続きを整えるべきである。
管理者は困難の原因を調べたのち、その知見を管理部門に伝える。既存の決定が実行されていないと判断すれば、管理部門はその領域を担当する管理者に通知し、当該管理者が事態を是正しなければならない。決定の実施準備の段階を繰り返す必要が生じた場合には、しかるべき部門に通知が行き、管理部門は問題解決の新しい経路と日程を作成して、問題解決の責任を割り当てる。この手続きは、有効な決定が得られるまで繰り返されうる。
決定が誤っている場合には、代替案の選択に誤りがあったのか、それとも原因となる要因が変化したのかを見きわめるために、先の分析に立ち返らなければならない。満足のいく決定が見つからなければ、原因となる要因を定義し直さなければならない。新しい可能性が生じたときには、問題の原因を再検討する必要が出てくることもある。調査の過程で管理者が別の問題を見つけた場合、それも管理部門に報告し、この新しい問題はほかの問題と同様に処理される。問題が相互に依存している場合には、ジレンマが生じうる。すなわち、関連するもう一つの問題が解決されるまで、調査者は自分の問題を解けない。その場合、第一の問題の解決は第二の問題が解決されるまで保留される。
意思決定の次の段階は代替的な解の探索である。これはおそらく十の段階のうち最も形式化しにくい段階であり、ここでは管理者の創造的な能力に頼らなければならない。とはいえ、問題を割り当てられた管理者は通常その解決に責任を負うのであり、十分な技術的能力と経験をそなえ、専門文献の動向にも通じているべきである。管理者は、実務で実証済みの解に通じているだけでなく、新しい解を生み出すべきである。したがって、この方向への実験と開発の志向は奨励されるべきである。たとえば研究開発は、設計部門だけでなく組織のあらゆる部分で行われるべきである。
この段階では、問題の解決に責任を負う者が代替的な解を評価し、そのなかから最良のものを選ぶ。組織内でこうした計算を標準化するには、たとえば解の比較書式を用いることができる。管理者がある解の費用と産出を評価できない場合には、設計部門や経理部門が助力してよい。利用しうる解のなかから最良のものを選んだのち、調査者は、それをどのように、いつ、誰が実施するのか、その適用を誰が管理し、結果を誰が検証するのかを計画すべきである。また、それに応じて予算を調整すべきである。
意思決定のプロセスの次の段階は、直接または間接に複数の部門に影響する提案を特定することである。これによって、そうした提案が影響するすべての部門に及ぼす影響範囲を定めることができる。この機能は管理部門が担う。管理部門は、どの部門が影響を受けるかを定めたのち、提案を調整すべき管理者を選び、その作業の日程を作成し、提案への反応を伝えるべき期限を定める。提案を受け取った各部門は、それを自部門の具体的な業務に適用した場合に見込まれる純便益あるいは効果を算定する。各部門は、実施や検証といった提案のほかの側面も検討し、実行不可能と考える局面があれば異議を唱えてよい。いかなる提案も、その提案によって報酬と仕事が影響を受ける部署の従業員によっても検討され、その反応は下級管理者会議の報告として調査者がまとめる。
各部門が提案の実施によって得られる便益の算定を終えたのち、その結果は管理部門へ送られ、管理部門は便益の一覧表を作成して組織全体の純便益を確定する。部門のなかには追加の情報を求めるものや、意見の相違があまりに深刻で関係者会議での討議が必要だと判断するものもありうる。したがって各部門には、関係するすべての部門が出席する会議を提案する機会が与えられるべきである。そうした会議の結果として当初の提案が変更された場合には、組織が提案から得る便益が再計算される。
ある決定に同意しない管理者、あるいはその決定が自らの活動に悪影響を及ぼすと考える管理者は、その異議について説得力のある量的な根拠を用意しなければならない。提案の実施から純便益が得られること、そして提案が組織の管理者と一般の従業員に受け入れられていることが確認されたのち、管理部門は提案を承認に回す。
組織における権限の集権化は、決定の承認の段階でとりわけ有効である。権限を与えられた者はこの場合、決定の検討と裁可により多くの時間を割けるからである。実際、彼らにほかの職務を課すことはできない。そして管理部門はもちろん、どの決定をどの職責の者が承認するのかをあらかじめ知っている。提案を承認する者は四つの選択肢のいずれかをとりうる。決定を承認すること、却下すること、追加の情報を求めること、問題の分析を続けるよう促すことである。管理者が決定を承認しないということは、分析が適切に行われたにもかかわらず、追加の情報が必要であるか、代替的な解を検討する必要があるということである。得られる便益についての不確実性が大きい決定もありうる。その場合、トップマネジメントは四つか五つの代替案から一つを選ばなければならない。この場合も、最終的な承認の前に決定をさらなる明確化のために差し戻すことができる。意思決定のプロセスが正しく行われていれば、決定の承認は通常は形式的な手続きとなる。決定の承認が完全に拒まれることは比較的まれである。それは意思決定のプロセスそのものに重大な欠陥があることを示すからである。
決定の実施を準備するプロセスは、決定そのもののうちに定められている。したがってここでは、組織の資源を変更する際に果たさなければならない個々の作業だけを述べる。承認された決定を受け取ると、管理部門は管理者たちに実施の準備を始めてよいと通知する。管理部門は、決定の実施準備をさまざまな局面に分けた経路と日程をあらためて作成し、それぞれに責任を負う管理者を割り当てる。決定の一部は同時に執行できるが、ほかの部分は順次執行しなければならない。作業日程を遂行する過程で、管理部門は決定の実施準備の指示をさまざまな管理者へ送る。この指示には、とりわけ完了予定日が明記される。参加する各部門では、この決定の写しが現行の指示とともに綴じられ、定められた日に決定が発効する。
組織が一定の事態に備えられるよう、いくつかの決定はあらかじめプログラム化されており、管理部門は述べたとおりの手順でこれらのプログラムを起動する。決定をあらかじめプログラム化するこの仕組みによって、組織の将来の活動を計画できるだけでなく、情報部門と組織の業務部門の行動を調整することもできる。外部環境に特別な状況が生じた場合の変更を組織があらかじめ計画していれば、情報部門は、あらかじめプログラム化された決定を実施する必要があることを、関係するすべての部署に通知できる。
部門を率いる中間管理者の主たる責務は、その部門が自らに課された決定を遂行しうる態勢を保つことにある。決定にはこれらの問題をどう解決するかの指示が含まれているが、請求書式に記入してしかるべき部門へ回す必要がある。管理者が現行のすべての決定を十分に把握していれば、従業員がそれを遂行しているかを絶えず確かめ、必要に応じて小さな調整を加えることができる。深刻な問題が生じたときには、管理者は決定の手引きのなかから適切な決定を探すことになる。適切な決定が存在しなければ、特定した問題を記録する書式に記入して管理部門へ送る。決定が文書から行動へと転じるのは、まさに決定の適用を管理するこの段階においてであり、管理者の責務は、指示と従業員をつなぐ環となることである。
決定の有効性を検証する方法は三つある。第一の方法は、見込まれた収益と実際の収益が等しいかどうか、両者の差が許容範囲に収まっているかどうかを判定する。この比較は月ごと、週ごと、あるいはそのほかの任意の間隔で行える。大きな逸脱は記録され、それについての情報が特定された問題という形で管理部門へ送られる。
第二の方法は、設備の予防保全プログラムで用いられるのと同様の、行動の検査を行う。無作為に選ばれた時点と場所で、対応する決定が実際に遂行されているか、それが有効であるかを直接に観察する検査が行われる。ここでも逸脱は、管理部門へ入る問題となる。さらに、従業員も管理者も問題を提起するのだから、決定の遂行を検証する第三の方法がある。それは次のようなものである。ある部門が、別の部門が決定を適切に遂行していないと報告する。これもまた調査の対象となる問題となる。
決定の有効性を検証する段階は、フィードバックを、すなわち環を閉じる操作をなす。
この段階は組織のなかで問題の検出を保証する唯一のプロセスではないが、既存のプログラムが正しく遂行されているかという観点からそれを評価する、組織の一部分である。第一の方法による決定の有効性の検証の仕組みには、集権化されたデータ処理システムが必要になる。第二の方法では、問題を解く管理者に、発効したすべての決定を定期的に検査する責務が課される。そのために、そうした決定をすべて見直す日程が作成される。第三の方法は、程度の差はあれ、その場かぎりの手続きにあたる。