意思決定

意思決定は、さまざまな種類の対象に、またその存在のさまざまな条件のもとで適用される。意思決定理論の枠内で練り上げられた形式的な方法は、人間活動のさまざまな領域における意思決定の過程に多くの共通点があることを明らかにしている。

形式的な意思決定の方法が有用となりうるのは、次の場合である。

  • 解決を要する問題あるいは問題状況が存在すること。望ましい結果は、問題状況を解決するにあたって達成すべき一つあるいは複数の目標と同一視されることが多い。
  • 問題を解決する選択肢、目標を達成する道筋、行動、あるいは対象が複数あり、そのなかから選択が行われること。意思決定理論では通常、これらの選択肢を代替案と呼ぶ。可能性が一つしかなく選択の余地がなければ、意思決定の問題は存在しない。
  • 問題を解決し目標を達成するありうる道筋に、一定の制約を課す要因が存在すること。これらの要因は問題の文脈によって定まり、物理的、技術的、経済的、社会的、個人的なものなど、さまざまな種類でありうる。
  • 問題の解決に利害をもち、いずれかの解を選ぶ権限をもち、下された決定の遂行に責任を負う人あるいは人の集団が存在すること。

問題についての決定のライフサイクルは、いくつかの段階からなり、多段階の反復的な手続きをなす。

決定の必要は、問題状況が現れたときに生じる。この場合、問題が特定される——すなわち問題の内容上の記述が与えられ、その解決の望ましい結果が定められ、既存の制約が評価される。

次の段階では、意思決定の問題が定式化される。そのためにはありうる解(代替案)の集合を定めなければならない。検討している問題によって、ありうる解の数はごく少数のこともあれば、数十、数百、数千に及ぶこともある。理論上は、検討される代替案の数は無限でありうる。

ありうる解をすべて余すところなく記述するには通常、問題とその解決の代替的な道筋にかかわるさまざまな情報を集め分析しなければならない。必要な情報がない、あるいはそれを得られないことは、問題を解けなくしてしまいうる。そうした場合には当初の問題の記述に立ち戻り、その記述を改めなければならない。そうした必要は、解決過程のそれ以前のあらゆる段階でも生じうる。複雑な選択の状況では、単純化された解を得るために、問題の専用のモデル(通常は数理モデル)を練り上げる必要が生じることもある。

第二の段階は、意思決定の問題の定式化をもって終わる。指摘しておくべきは、解決される問題の内容上の詳しい記述が、すでに第一の段階において、その解決のありうるアプローチを大きく定めており、その後の段階のすべてあるいは多くを飛ばして、ただちに意思決定の問題の定式化へ至りうることである。

意思決定の問題が定式化されると、解の探索が始まる。この段階には第一に、すでに知られている方法のなかから問題を解く適切な方法を選ぶこと、あるいは新しい方法を練り上げることが含まれ、第二に、解を得る過程そのもの——さまざまな解の選択肢を評価し分析し、そのなかから最も望ましいものを選ぶこと——が含まれる。問題によっては最終的な結果を得ることが難しくない場合もある。しかし多くの場合、それはかなり複雑で手間のかかる手続きであり、多くの人の知識と専門性、そして現代の計算技術の能力を必要とする。

同時に、問題解決の過程のすべての段階を終えても、最終的な選択がつねに行えるとはかぎらない。最良の解が見つからない状況も生じる。必要な選択肢がそもそも存在しないこともある。その場合には、当初の問題の定式化を改めるか、それ以前の段階に立ち戻って必要な付加的情報を集め、問題の形式的な記述や問題状況のモデルに変更を加え、検討する代替案の数を広げるか狭めるか、あるいは新しい選択肢を構成することができる。

いずれにせよ、最良の解の探索は、たとえ肯定的な結果に至らなかったとしても無駄にはならない。それは検討している問題の新しい理解を促し、考慮すべき新しい側面を浮かび上がらせ、それを解くほかの道筋を示唆しうる。

受け入れうる選択肢が見つかれば、決定の執行の段階が始まる。そこでは採用された決定が実施され、実施の過程が監視され、問題状況の解決の結果が評価される。厳密に言えば、この段階は意思決定の手続きには属さない。しかし決定の執行を全体の図式に含めることは、方法論的にも実務的にも重要である。この段階が、問題状況の発生、解決、消滅というライフサイクルを閉じるからである。さらに、採用された決定を実施することが、それ自身の解決を要する新しい問題を生むこともある。

意思決定の問題が生じるのは、問題(課題)があまりに複雑になり、その定式化(記述)にふさわしい形式化の道具をただちに適用できず、問題を定式化する過程がさまざまな知識領域の専門家の参加を必要とする場合である。

そこから、問題の定式化そのものが問題含みになり、専用のアプローチ、技法、方法を練り上げることが必要になる状況が生じる。そうした場合には、意思決定の問題(問題状況)の領域を定め、その解決に影響する要因を明らかにし、決定を下せるような形で問題を定式化あるいは記述することを可能にする技法と方法を選ぶ必要が出てくる。

このように決定を下すには、目標の達成可能性を評価し手段を評価するために導入された基準を用いて、目標とその達成手段を結びつける表現を得なければならない。並行して発展したさまざまな応用分野では、そうした表現に異なる名が与えられてきた。成果基準、有効性の基準あるいは有効性の指標、目的関数あるいは基準関数、などである。(ロシア語の文献ではこれらを целевая функция——文字どおりには「目標の関数」——および функция цели とも呼ぶ。いずれも日本語の「目的関数」にあたる。)