『オペレーションズ・リサーチ入門』チャーチマン C・W、アコフ R、アーノフ L、1957年。
オペレーションズ・リサーチはもともと第二次世界大戦中にイギリスで生まれ、その発展はほどなくアメリカ合衆国に引き継がれた。したがってオペレーションズ・リサーチは最初に軍事の問題に適用され、戦後になってはじめて金融、産業、行政の管理の問題に適用された。当初この過程はイギリスでより速く進んだが、一九五一年にオペレーションズ・リサーチがアメリカの産業に確かな足がかりを得ると、合衆国で急速に発展しはじめた。
のちにオペレーションズ・リサーチと呼ばれることになる分野の仕事は軍の組織で始まったが、その発展と独立した学問としての形成は、よく知られた産業発展の過程との類推によって描くことができる。産業革命以前、生産は主として小規模な企業が担っており、そこでは経営のすべてを一人の所有者が行っていた。彼は仕入れをし、仕事を計画し指揮し、製品を売り、労働者を雇い、解雇した。
その後、管理機能の分化が起こった。生産部門の長、販売部門の長、財務部門の長、人事部門の長などが現れた。機械化の進展と部分的な自動化は、産業生産のいっそう急速な成長をもたらし、それがオペレーションの細分化と、管理機能のさらなる分割を引き起こした。
多数の個別のオペレーションが現れれば、それらを統括する管理職の設置が不可避的に必要になった。今日では、生産部門の長のうち生産現場と直接に接する者はますます少なくなっている。彼らは事実上、純粋に組織的な機能を果たす職員になっている。
管理機能の分化と分割が進むのと同時に、産業組織のさまざまな生産部門で生じる問題への科学者の関心が高まった。とりわけ科学者は産業生産の問題にますます注意を払うようになり、その共同の努力の結果としていくつもの応用科学の新しい部門が生まれ、それぞれの専門——機械技術者、化学技術者、産業建設技術者、統計的品質管理技術者、生産管理の専門家——が現れた。ほかの領域では、市場調査、産業経済学、計量経済学、労使関係の心理学、産業社会学といった応用科学分野の専門家が現れた。
管理機能の分化と分割が進んだこの時期に、新しい種類の管理の問題が現れ、形をとりはじめた。それは組織管理的な性格の問題と呼びうるものである。これらの問題は、企業内の機能的な分業の直接の帰結として生じ、そこから組織的な活動の必要が生まれた。いかなる組織においても、専門化した各部門は全体の仕事の一定の部分を担う。仕事の各部分を果たすことは、組織全体の目的を達成するために必要である。しかしそうした分業の結果として、専門化した各部門は自らの目標をもつようになる。
組織型の問題が現れると、経営コンサルタントという職が現れた。コンサルタントの役割は、ほかの領域で似た問題を解決した経験を活かして、生じてくる組織の問題の解決を助けることにある。彼らが用いる方法は、提案された解を分析する際に、ある類の問題に共通するものを見いだすことからなる。当然ながら次第に、これらの解の共通の構造を見いだす(「モデル」を構築する)試みと、見いだされた構造の正しさを検証する一般的な原理を求める試みがなされるようになった。これらの試みは、組織型の問題の研究に科学的アプローチをとる必要へと導いた。もっとも、オペレーションズ・リサーチの登場以前にも、この分野で科学の成果が折にふれて用いられてきたことは指摘しておくべきである。
第二次世界大戦中、軍当局は戦略上・戦術上の問題の解決を助けるべく、多くの科学者を招いた。これらの問題の多くは、まさに我々が組織の問題と呼んできた型に属していた。さまざまな科学分野の代表者が作業グループに集められ、資源の利用を最適化する課題を与えられた。これが最初のオペレーションズ・リサーチのチームであった。
産業組織の成長とともに生まれた学問であるオペレーションズ・リサーチの目的は、組織全体の目的を追求するなかで生じる各部門の相互作用にかかわる問題を解決するための科学的な基礎を、経営陣に与えることにある。
組織全体にとって最も有利と思われる解を最適解とみなし、組織の一つあるいはいくつかの部分にとって最も有利な解を準最適解と呼ぶ。
オペレーションズ・リサーチを行うにあたっては、組織全体のできるだけ大きな部分にとって最良の解を見いだす努力がなされる。たとえばオペレーションズ・リサーチの方法で企業の保全の問題を解こうとする場合には、さまざまな保全方針が生産全体に及ぼす影響を考慮に入れることが目指される。さらに進んで、それがある企業にどう影響し、その企業が今度は産業全体にどう影響するか、といったことまで定めようと試みることもできる。可能なかぎり、生産部門への影響がほかの部門と企業全体にどう及ぶかも考慮しようと試みられる。オペレーションズ・リサーチでは、本質的と思われるかぎりにおいて、相互作用あるいは因果関係を考慮することが目指される。しかし個々の場合には、オペレーションズ・リサーチの範囲は実務上、組織の上位の階層への接近が制限されているために、あるいは時間、資金、資源の制約のために、通常は限られたものになる。
理想の志向と現実の可能性のあいだにはつねに隔たりがある。それでもオペレーションズ・リサーチの根本的な目標は、組織全体の機能を考慮に入れたうえで、組織型の問題の最適解を見いだすことに帰着する。オペレーションズ・リサーチの目標のこうした一般的な性格は、システムアプローチの一例である。というのも「システム」によって我々が意味しているのは、機能的に関係づけられた構成要素の相互に結びついた複合体だからである。
問題へのシステムアプローチは、最も一般的な形で定式化された問題を一つの研究プロジェクトで解かなければならない、ということを意味しない。それがどれほど望ましくとも、実務で達成されることはきわめてまれである。実務では通常、全体の問題は一定の順序にしたがって部分ごとに解かれる。多くの場合、全体の問題をあらかじめ定式化することはできず、ある段階での解が次の一歩を定めることを可能にする。
要するに、システムのすべての部分を同時に最適化することはきわめて望ましいが、実務上の制約から通常は、システムの個々の部分を順次最適化し、それと並行して局所的な最適解を相互に調整しながら、問題全体の最適解を定めることが求められる。
オペレーションズ・リサーチがシステムのできるだけ大きな部分を記述しようと努めるという主張から、システムを全体として研究することから始めなければならない、ということは導かれない。オペレーションズ・リサーチの研究の大半は、範囲の限られた既知の問題から始まる。しかしその後、事情の許すかぎり研究の境界が広げられていく。本質的に、研究の範囲はオペレーションズ・リサーチの際立った特徴の一つを定める尺度である。したがってオペレーションズ・リサーチの研究は、機械技術者、産業建設技術者、化学技術者、あるいは市場調査の専門家が取りかかるのと同じ問題から始まることが非常に多いが、その種の問題で終わることはまれである。
各々の問題を解くなかで新しい問題が生じることは、オペレーションズ・リサーチの特徴である。ここから、狭く限られた問題を解く場合にはオペレーションズ・リサーチの方法の適用が効果的でないことは明らかである。最大の便益は、継続的で累積的な研究から——すなわち一つの問題から次の問題へと順次移っていくことから——得られる。これは、先に述べたオペレーションズ・リサーチの目標の定義そのものから導かれる。
オペレーションズ・リサーチの最も本質的な特徴の一つは、最適解を見いだし、最適な戦略あるいは設計を定めようとする志向である。課題は、既存のものより優れた解を見いだすことではなく、ありうるすべての解のなかで最良の解を見いだすことにある。そうした解はつねに得られるわけではない。科学の現状、時間、資源、能力の不足による制約があるからである。しかしオペレーションズ・リサーチにおける努力は、最適解、あるいはできるかぎりそれに近い解を見いだすことに絶えず向けられている。
最終的な決定を下すのは、オペレーションを研究する者ではなく、オペレーションを管理する者である。オペレーションズ・リサーチのチームにできるのは、解を勧告すること、あるいは特定の解を選ぶための基礎を与えることだけである。決定が下されたのちに、その実施を支援することもできる。
要約すれば、最も一般的な意味でのオペレーションズ・リサーチは、組織システムの機能にかかわる問題に科学的な原理、方法、手段を適用し、それらのシステムを管理する者に最適な解を与えることを目指す営みとして特徴づけられる。